安田記念 「スワーブリチャード」

今回、大きなポイントとなるのがスワーヴリチャード(牡4歳/庄野靖志厩舎)の出走だ。同馬は3歳時に牡馬クラシック戦線を歩み、GIII共同通信杯(東京・芝1800m)を勝ったほか、GI日本ダービー(東京・芝2400m)2着。秋にはGIIアルゼンチン共和国杯(東京・芝2500m)を勝って、GI有馬記念(中山・芝2500m)4着という戦歴を残してきた。そして今年に入ると、GII金鯱賞(3月11日/中京・芝2000m)、GI大阪杯(4月1日/阪神・芝2000m)と連勝してついにGI初制覇を成し遂げている。

 昨年の大阪杯を勝ったキタサンブラックがその後、GI天皇賞・春(京都・芝3200m)に出走して勝利したように、2000mの中距離GIに出走するような馬は、通常、春には天皇賞・春やGI宝塚記念(阪神・芝2200m)に出走することが多い。スワーヴリチャードが大阪杯後、安田記念に出走すると発表された時は驚いた人も多いだろう。

 過去32回の安田記念で、前走が2000m以上の馬が勝利したのは2004年ツルマルボーイ(当時GII大阪杯6着から)、1987年フレッシュボイス(GII阪神大賞典4着から)、1990年オグリキャップ(有馬記念1着から)の3例のみ。このうち芝2500m以上の重賞勝ち馬で安田記念を勝利したのは、オグリキャップだけである。さらに、上記3頭はマイル以下の距離にも勝利があり、オグリキャップ(GIマイルチャンピオンシップ)とフレッシュボイス(GIIIシンザン記念)の2頭はマイル戦の重賞勝ちもあった。今回、芝1600m以下の出走が初めてとなるスワーヴリチャードは、これまで勝利してきた馬とはちょっと事情が異なるのだ。

スワーヴリチャードが過去に出走した10戦で、1000mの通過タイムが最も速かったのがGI皐月賞の59秒0となり、このレースでは6着に敗れている。それを考えれば、1000m通過タイム57秒台が多いこの安田記念の流れに対応できるかは疑問だ。

 ただ、スワーヴリチャードにはコース適性という大きなアドバンテージもある。東京コースでは4戦して2勝、2着2回。すべて重賞で、共同通信杯とアルゼンチン共和国杯を勝っている。また、血統的にも同じハーツクライを父に持つジャスタウェイが2014年のこのレースを勝利している。不安材料と強調材料が同居するが、筆者としては、今回は速い流れの経験不足が響き、勝ち切るまでは難しいと見る。

 同じハーツクライ産駒では、牝馬のリスグラシュー(牝4歳/矢作芳人厩舎)も注目の存在だ。同馬は昨年のGI桜花賞(阪神・芝1600m)2着、GI秋華賞(京都・芝2000m)2着など、3歳牝馬三冠戦線の中心的存在として活躍。今年に入り、GIII東京新聞杯(東京・芝1600m)を勝ち、GII阪神牝馬S(4月7日/阪神・芝1600m)3着、GIヴィクトリアマイル(5月13日/東京・芝1600m)2着を経て、ここに出走してくる。

 本馬はスワーヴリチャードとは異なり、マイル実績は十分で、全13戦中8戦して2勝2着4回3着2回。重賞はGIIIアルテミスS(東京・芝1600m)と前述の東京新聞杯の2勝を含み、すべて馬券圏内に入っている。東京コースで実績があるのと、東京新聞杯で牡馬相手に重賞を勝っているのは大きな強みだ。
 不安点を挙げるとすれば、ヴィクトリアマイルからのローテーションだろうか。2つのレースは同じ条件で関連性も高そうに思われるが、過去に延べ19頭が同パターンで出走して2勝、3着1回とそれほど成績はよくない。中2週のローテーションなどが影響しているのだろう。リスグラシューが中2週の間隔でGIに出走するのは初めてで、そのうえ今年4戦目。目に見えない疲れが心配だ。

ここまで2頭の有力4歳馬を取り上げたが、その2頭にも増して充実著しいのがサングレーザー(牡4歳/浅見秀一厩舎)だ。昨年秋、500万下からの4連勝でGIIスワンS(京都・芝1400m)を勝ち、マイルチャンピオンシップ(京都・芝1600m)3着、GII阪神C(阪神・芝1400m)3着。今年に入ってからは昨暮れ以来のGII読売マイラーズC(4月22日/阪神・芝1600m)を1分31秒3のコースレコードで勝利して、ここに臨む。
 昨年後半は7月からの連戦もあり、GIでは勝ち切れなかったが、この春は安田記念を目標に定め、ここが年明け2戦目。十分な上積みも期待できる臨戦過程を踏んできている。

 父ディープインパクトの産駒は、今春の東京芝1600mのGIでは、ケイアイノーテックがNHKマイルCを、ジュールポレールがヴィクトリアマイルを勝利している。元々、マイルGIには強いが、この”血の勢い”も見逃せないところ。このレースでも2011年リアルインパクト、2017年サトノアラジンが勝利している。
 鞍上の福永祐一騎手は先週、ワグネリアンで悲願の日本ダービー制覇。さらに、管理する浅見秀一調教師はレインボーラインでGI天皇賞・春を、馬主のGIレーシングは前述のジュールポレールでヴィクトリアマイルを制しており、関係する人たちの勢いも十分だ。サングレーザー自身のみならず、血統、関係者の勢いで、一気のGI制覇に期待したい。

(出典 sportiva)